■スマートエネルギーマネジメント
一般に、エネルギーマネジメントとは、多様な形態のエネルギーの生成、変換、蓄積、伝送、消費を
有機的に組み合わせ、連携させることによって効率的なエネルギー利用を実現することと言える。
下記の図は、主なエネルギーの形態とそれらの間の変換・蓄積技術を模式的に示したもので、たとえ
ば、エネルギーという視点から見た自動車は、化学エネルギー(ガソリン)を運動エネルギーに変換す
ることを主目的としているが付随的に熱エネルギーも生成する装置、と言うことができる。
図:エネルギーの形態とエネルギーの相互変換:直観的なイメージを描いたもので、科学的厳密性はない。たとえば、多くの蓄電池は、電気エネルギーから化学エネルギーへの変換(充電)、化学エネルギーとしての貯蔵、化学エネルギーから電気エネルギーへの変換(放電)を行う装置と考えるのが妥当である。
20世紀末までのエネルギーマネジメントでは、物理化学を基盤とした材料、デバイス、装置、プラン
トの開発や、電力ネットワークの制御理論・技術が中心となっていたが、最近では、21世紀になって急
速に発展した情報通信ネットワークを活用した高度なエネルギーマネジメントに関する研究開発、実用
化が進められており、そうした21世紀型エネルギーマネジメントをスマートエネルギーマネジメントと
呼ぶ。
スマートエネルギーマネジメントでは、情報ネットワークで結ばれた各種センサを使ってリアルタイ
ムかつ精密に、エネルギーの生成、変換、蓄積、輸送、消費の状態を把握することができ、得られた膨
大なデータを分析するデータサイエンスや、最適なエネルギーマネジメント法を求める高度な機械学習
法などといった最先端の情報処理技術の開発も重要となる。
一方、1997年の京都議定書の制定を契機に、地球温暖化防止のための研究開発、たとえば再生可能エ
ネルギーの研究開発などに加え、CO2の排出権取引や再生可能エネルギーの固定価格買取制度など、新た
な経済制度の設計、導入が図られ、スマートエネルギーマネジメントは、科学技術だけでなく21世紀型
の社会経済体制の構築にも深い関わりを持つようになった。
■活動計画
【研究活動】
・平成28年度時点で、本ユニット構成員が実施している研究プロジェクトに関する研究討論会を定期的
に開催し、研究の深化、発展を図る。
・定例研究討論会における議論を基に、今後推進すべき研究課題を明確化し、新たな研究プロジェクト
の計画を立て、関連研究助成機関への研究提案を行う。
・農学研究科において現在検討が進められている新農場でのGreen Energy Farmプロジェクトと連携を
図り、農業におけるエネルギーマネジメントという実践的研究開発を推進することを計画している。
【産学連携活動】
・エネルギーの情報化WGの会員企業に対して、本ユニット構成員の生み出した研究成果を紹介、議論
するための研究発表会を定期的に開催し、産業界との連携を深める。
・研究成果発表会での議論を踏まえ、それらの実用化を目指した企業との共同研究への展開を目指す。
【学内活動】
本学では、省エネルギー推進方針を踏まえて、具体的な省エネ対策の実施と対策に必要な原資を確保
することを目的として、「京都大学環境賦課金方針」を平成20年1月21日に制定し、これまでに空調の効
率化、照明のLED化など多くの活動を実施し、着実な成果を挙げてきた。
こうした機器の省エネ化を一歩進め、スマートエネルギーマネジメントというシステム指向に基づい
た省エネ、省CO2の深化を図るため、本ユニットで得られた研究成果を基に環境安全保健機構および施設
部との連携を図り、本学におけるエネルギーの効率的利用を推進する活動を支援する。
■期待される成果
従来のエネルギー科学・工学に情報通信ネットワーク、情報処理技術を融合させたスマートエネルギ
ーマネジメントによって、21世紀型社会におけるエネルギー基盤を構築することは、限りあるエネルギ
ー資源の有効活用、地球温暖化防止という地球社会の持続性を保証するための重要な課題であり、本ユ
ニットによる研究成果の持つ意義は計り知れない。
特に資源の少ない我が国においては、効率的なエネルギー社会基盤を構築することは、国の存続に関
わる重要課題である一方、発展途上国にとっては効率的なエネルギー社会基盤が経済的発展、生活レベ
ルの向上に不可欠な要素となっており、本ユニットで生み出された研究成果を産学連携によって実用化
を図ることによって、我が国の持続性、発展途上国の発展が図られる。
また、東日本大震災を受け、経済産業省だけでなく、環境省、国土交通省、農林水産省など多くの省
庁が21世紀型エネルギー社会基盤開発に向けた政策を進めており、本ユニットから生み出された研究成
果によって、そうした政策の実現が可能となるものと思われる。
さらに、東日本大震災の影響を直接受けた東日本の大学に比べ、本学の省エネ、省CO2意識は必ずし
も高いということはできず、最近の電気料金の高騰によって、エネルギーコストが無視できないレベル
に増加している。これまで省エネ、省CO2活動を推進してきた環境安全保健機構および施設部との連携
を図り、各部局における省エネ、省CO2活動を支援することによって、目に見える省エネ、省CO2を実現
することができると考えられる。